Feature Story
伝統色の教養
色の名前を知ったからといって、すぐその色が見えるようになるわけではない。私はその感覚を出発点に、紅、藍、桜色、朽葉といった伝統色をたどりました。知識を増やすためだけではなく、なぜ私はこの色に惹かれるのだろう、と静かに考えたくなる一冊です。
Feature Story
色の名前を知ったからといって、すぐその色が見えるようになるわけではない。私はその感覚を出発点に、紅、藍、桜色、朽葉といった伝統色をたどりました。知識を増やすためだけではなく、なぜ私はこの色に惹かれるのだろう、と静かに考えたくなる一冊です。

読み物としての入口
紅、緋、朱。縹、浅葱、藍。日本の伝統色には、細やかな名前があります。でも、この本で見つめているのは、名前の一覧ではありません。同じ赤でも、なぜ受け取る印象が変わるのか。なぜ、ただの「紫」では済まない色に立ち止まるのか。色の名前に折りたたまれた気配を、暮らしの目線でたどっていきます。
色は、色票の上で止まっているものではないのでしょう。朝と夕方。照明の下と自然光の下。晴れた日と曇りの日。同じ藍でも、見え方は静かに変わります。桜色も、花そのものの色だけで言い切れない余白があります。この本では、固定しきれない色の揺れを通して、日本の色の見方をやわらかく見直していきます。
梅、藤、柳、萌黄、朽葉。こうした名前には、色だけでなく風景が入っています。さらに、木、紙、土、絹といった素材の上で、色の受け取り方は変わっていきます。着物の地色と柄のわずかな差、白に見えて真っ白ではない色。そうした細部にふれることで、派手さとは別の美しさが、少しずつ見えてくるかもしれません。
本書は、専門的な色彩理論の解説書でも、伝統色を網羅する事典でもありません。名前を知ることと、感じること。そのあいだを行き来しながら、自分が何に惹かれるのかを見つめていく本です。ある色に気品を感じる。ある色に懐かしさが宿る。その理由を急いで言い切らず、少し丁寧に見てみたい方に開かれています。
私は、はっきり言い切れないのに心に残る色が気になります。この本が、読んだあとに景色を少し違って見つめる時間につながったら嬉しいです。
About the Book
日本の美意識を色から学び、日々の見方を深める一冊