コラム

記事を本にするとき、いちばん重いのは章立ての設計になる

記事をまとめて本にする作業のなかで、いちばん重いのは章立ての設計です。型は公開されていても、自分の記事を全部読み返して当てはめる作業そのものが重く、着手を遠ざけています。

親ガイド: 目次・章立ての作り方。Kindle本の設計図を作る手順

記事を本にする作業のうち、いちばん重いのは章立てだ。

まとめるだけだと思っていると、ここで足が止まる。記事は書いた順に並んでいる。本はその順番では読めない。読者は最初から順に読むので、前提になる話が先に来ていないと意味が通らない。並び替えが要る。この並び替えは、記事を書いたときには考えていない作業だ。1本ごとに完結させることだけを考えて書いてきたので、全体の順番という視点を持ったことがない。初めてやる種類の仕事になる。

並び替えを始めると、基準がいくつも出てくる。時系列で並べるのか。テーマごとにまとめるのか。易しいものから難しいものへ積むのか。どれにもそれらしい理由があり、決め手がない。1つの並びを作っても、別の並びのほうがよく見えてくる。しかも、並びを変えると必要な補足も変わる。ある記事を前に持ってくると、そこで説明していなかった前提を足すことになる。逆に後ろへ回すと、重複していた説明が要らなくなる。並びと中身が連動しているので、片方だけを決められない。

記事1本ずつが完結していることも、かえって邪魔をする。それぞれが独立して読めるように書いてあるので、つなげると導入が重なる。本にするには、その独立性を崩す必要がある。書いたときと逆の作業を、全部の記事にすることになる。

タイトルの付け方も変わる。記事の題名は日記的で抽象的なものが通用する。本では誰が何をどうするのかを示したほうが見つけてもらいやすい、という指摘がある。並べ替えと同時に、見出しの言葉づかいも作り直すことになる。同じ内容でも、探している人に届くかどうかはここで変わる。

終わりの判定ができないのも重い。記事なら、書き切れば終わる。章立ては、正しいかどうかを確かめる方法がない。読者が読みやすいかどうかは、通して読ませてみないと分からないからだ。終わりが自分で決められない作業は、他の予定に押し出されやすい。

型そのものは公開されている。共通のテーマで記事を3〜5本選び、序章、本論3章、結論という5部構成に割り当てる。そういう手順を書いている人がいる。つまり、知らないから決まらないのではない。型は手に入るのに、自分の何十本かをそこに当てはめる作業が重い。そこが本当の障壁になっている。

自分でやろうとすると、まず何十本もの記事を頭に入れるところから始まる。全体を把握していないと並べられないが、把握するだけで数日かかる。着手のコストが高すぎて、休日1日では入口にすら立てない。何度か挑戦して諦めた経験があると、さらに重くなる。前回どこまで考えたかも残っていないので、毎回ゼロから始めることになる。挑戦した回数だけ、着手が億劫になっていく。

完成形を先に思い描くことも、着手を遠ざける。最初から1冊分の完成形を目指すと詰む、という指摘は、実際に出版まで進んだ書き手のあいだから出ている。構えが大きいほど、手持ちの記事はどれも足りなく見える。その状態で並べ替えを始めても、どの並びも不十分に見えるので、決まるはずがない。

止まっている期間が長いほど、材料も増える。止まっているあいだも記事は書けるので、本数だけが積み上がる。書いている時間は進んでいる感覚があるが、並べ直す作業は前と同じだけ残っている。むしろ材料が増えたぶん、整理はわずかに重くなる。書くことが、並べ直す作業からの逃げ道になっていることもある。

並び替えの外側にも、作業が積まれている。実際にまとめた人の手順を読むと、原記事、下書き、最終原稿と段階ごとにフォルダを分ける話が出てくる。そこに表紙画像、商品説明、EPUBが加わる。並び替えを終えても、その先に管理の話が控えている。着手をためらう理由が、章立てだけではないことになる。

細切れの時間で進まないのも、この工程の性質だ。30分空いたときに、何十本の全体像を思い出すところから始めるのは現実的ではない。まとまった時間が取れる日を待つことになり、その日が来ない。区切りを自分で作れない作業は、忙しい人ほど後ろへ回る。

結局、足りないのは書く力ではない。記事はもう十分に書けている。足りないのは、全体を1つの流れとして設計する工程のほうで、これは書く技能とは別の種類の仕事になっている。同じ人の中にある能力でも、使う場面がまったく違う。

今日できることもひとつ。過去の記事の中から、最初の章に置きたいものを1本だけ選んでみる。1本決まれば、そこが並びの起点になる。選べないなら、止まっている場所は並び替えより手前だ。誰に向けた本かが、まだ決まっていない。

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よくある質問

章立てはどのくらいの構成で考えればいいですか。
共通のテーマで記事を3〜5本選び、序章・本論3章・結論の5部構成に割り当てるやり方が知られています。
並び替えの基準が決まらないときはどうすればいいですか。
時系列・テーマ別・難易度別など複数の基準があり得ます。まず1本、最初の章に置きたい記事を選ぶところから始めると起点ができます。