副業を始めるとき、月額の契約がいちばん重い。
道具を探していると、月額いくらという形の料金をよく見かける。初月無料、いつでも解約可能と書いてある。金額だけを見れば、1回の飲み会より安いこともある。それでも申し込むときに手が止まる。理由は金額ではない。毎月引き落とされ続けるという形のほうにある。
一度契約すると、判断が毎月やってくるのも重い。今月は使ったか。来月は使うか。そろそろやめるべきか。道具を使うことより、契約を続けるかどうかを考える回数のほうが多くなる時期がある。始めたはずの副業が、支払いの管理に変わっていく。
副業の最初の1か月は、成果が出ない。当たり前だ。始めたばかりなので当然でしかない。そこに毎月の請求が来ると、進んでいない自分と支払いが並んで見える。使わなかった月も同じ額が引かれる。忙しくて手を付けられない週が続くと、解約するかどうかを考える時間が発生し、それ自体が負担になる。
複数の道具を使い始めると、この負担が積み上がる。本づくりの解説を読むと、道具を役割ごとに分けるやり方が前提になっていることが多い。企画と構成はこのAI。長文の執筆は別のAI。リサーチはまた別。表紙はデザイン系のサービス。表紙を作るツールだけでも、複数が並べて紹介されている。それぞれに月額があると、始める前から固定費が積み上がる。契約の本数は、この段階で自然に増えていく。1つずつは小さくても、並べたときの金額で驚くことになる。本を出す前に、固定費だけが増えている状態になりやすい。
解約という作業が残ることも効く。始めるときは自分で決められる。やめるときは手続きが要る。いつでも解約できると書いてあっても、その画面を探すのは面倒だ。うっかり忘れて1か月分が引かれた経験を持っている人もいる。始める前から、やめるときのことを考えることになる。契約が増えるほど、この管理も増える。どれを契約していて、どれが無料のままかを、自分で覚えておくことになる。
もうひとつ、家計の中で説明しにくいという問題がある。単発の支出なら「これを買った」で終わる。毎月の固定費が増えると、家族に説明する場面が出てくる。まだ何も成果が出ていない段階で、毎月の支出を増やす説明をするのは難しい。だから金額の大小とは別の理由で、月額の契約は重くなる。
成果が出ていない時期ほど、この重さが効いてくる。売上が立っていれば経費として説明できる。その前の段階では、ただの支出として見える。いちばん心細い時期に、いちばん説明しにくい形の支払いが来る。続かない理由が、道具の性能とは関係ないところで作られる。
こうして、道具を比べているつもりが、契約の形で足止めされる。本を出したい気持ちはあるのに、その手前で判断が止まる。比べるべきものが、性能から契約の形へ移っているのに、自分ではそれに気づいていない。
使わない期間があること自体は、副業では普通に起きる。繁忙期に入れば手が止まる。家の事情でひと月空くこともある。書く作業は、毎日決まった量が発生する仕事ではない。進む月とまったく進まない月が交互に来る。ところが月額の支払いは、その波と関係なく一定で走る。進まなかった月ほど、支出だけが積み上がって見える。ペースが落ちる時期に、いちばん費用の効率が悪くなる。
効率が悪くなると、道具を減らす判断を迫られる。減らせば作業が重くなるので、また進まなくなる。進まないから、また減らしたくなる。続かない理由が、書く力とは無関係なところで回り始める。
判断を分けて考えたほうがいい。続ける前提があるかどうかで、合う形が変わる。すでに何冊も出す予定が立っているなら、毎月の支払いが割に合う場面もある。まだ1冊目を出せるかどうかの段階なら、その1回で終われる形のほうが判断しやすい。どちらが安いかではなく、どちらが自分の段階に合うかで決める話になる。
失敗したときに何が残るかも、比較の材料になる。合わなかったとき、契約が残るのか。手続きが残るのか。それとも何も残らないのか。この違いは、始めるときよりもやめるときに効いてくる。始める前に見ておく人は少ない。
今日できることもひとつ。いま契約している月額のサービスを書き出して、先月使わなかったものがいくつあるかを数えてみる。契約の形が自分に合っているかどうかは、それで見当がつく。使っていないものが多いなら、入口の低さは自分には効いていない。
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