コラム

文体がそろっていない原稿は、内容の前に本に見えなくなる

文体や見出しの階層がそろっていない原稿は、読みにくいのではなく、本として作られたものに見えません。体裁の不統一は、内容の質より先に読者の印象と信用を左右します。

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文体がそろっていない原稿は、読みにくいのではなく、本に見えない。

何年か書いていれば、書き方は変わる。昔の記事は敬体で、最近は常体になっている。見出しの付け方も、当時は細かく割っていたのに、いまは大きくまとめている。1本ずつ読むぶんには、どれも問題ない。書き方が変わること自体は、悪いことではない。何年も書いていれば、読者との距離感も、扱うテーマの深さも変わる。変化の跡が残っているのは自然なことで、記事としてはそのままでいい。

まとめて並べたときに、それが表に出る。章をまたぐたびに語尾が変わり、見出しの深さが合わない。内容は同じ人が書いたものなのに、寄せ集めのように見える。読者が最初に受け取るのは、この印象のほうだ。読みにくいわけじゃない。意味は通るし、迷子にもならない。ただ、本として作られたものには見えない。手をかけていないという判断が、中身を読む前に下される。書いた内容の質とは関係のないところで、評価が決まってしまう。

自分で直そうとすると、これが単調で終わらない作業だと分かる。全部の記事を開いて、語尾を直し、見出しの階層を合わせ、記号の使い方をそろえる。1本あたりの手間は小さくても、本数を掛けると休日が消える。しかも達成感がない。半日かけて10本そろえても、本文の中身は1文字も進んでいない。次の休日に続きをやる気になりにくく、途中まで直した状態で止まる。中途半端にそろっている原稿は、全部ばらばらのときより扱いが面倒になる。どこまで直したかを、また確認するところから始まる。

判断が要る場面もある。敬体と常体のどちらに寄せるか。見出しをいくつの階層にするか。決めてから始めないと途中でやり直しになるが、その基準を自分で作るところから始めることになる。基準に自信がないまま10本直すと、11本目で気が変わる。そこまでの分をやり直すことになる。

人に頼みにくい作業でもある。文章の意味を変えずに体裁だけそろえる仕事なので、内容を理解している人でないと任せられない。結局、書いた本人がやることになる。しかも、いちばん退屈な部分だけが自分に残る。

見落とされやすいのは、この工程が最後ではなく途中にあることだ。並べ替えが終わってから体裁を整えるので、並べ替えを終えた直後の、いちばん疲れているところに単調な作業が待っている。先に大きな判断を終えているぶん、気力の残りが少ない。

体裁は見た目だけの問題でもない。Kindleの審査で差し戻される原因として挙げられているのは、本文のレイアウトが崩れている、余分な空白ページが残っている、目次のリンクが切れている、といった点だ。見出しの階層がそろっていないと、目次が意図した形にならないこともある。整っていない原稿は、読みにくいという以前に、公開までたどり着かないことがある。

そろえることの効果は、読者には意識されない。気づかれないところに手が入っているのが、本として作られたものの条件でもある。つまり、いちばん手間がかかるのに、いちばん褒められない工程になっている。やる理由を自分の中に作りにくい。だから後回しになる。

直す対象は、文章だけではない。実際にまとめた人の手順を読むと、原記事、下書き、最終原稿と段階ごとにフォルダを分ける話が出てくる。途中まで直したものと、まだ直していないものが、別のフォルダに散る。どこまで進んだかを自分で記録しておかないと、次に開いたときに分からなくなる。記録を作る作業まで含めると、体裁を整える工程は見た目より大きい。

中断すると、判断の基準ごと忘れる。1週間空くと、敬体に寄せると決めたのか常体に寄せると決めたのかも思い出せない。途中まで直した原稿を見て、どちらの方針だったかを逆算するところから再開することになる。単調な作業ほど、記憶に残らない。だから再開のたびに、確認から始まる。

内容と体裁を、別々の問題として扱ったほうがいい。内容が足りないなら書き足す。体裁がそろっていないなら整える。この2つは、必要な時間も、集中の種類も違う。混ぜたまま「まだ本にできない」と考えていると、どちらに手を付ければいいかが決まらない。

今日できることもひとつ。いちばん古い記事と、いちばん新しい記事を並べて読んでみる。語尾が違っていれば、それがそろえる対象だ。見出しの深さも見ておくといい。そこがずれていると、目次の形にまで影響が出る。

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よくある質問

文体がそろっていないとKindleの審査に影響しますか。
本文では、Kindleの審査で差し戻される原因としてレイアウト崩れ・余分な空白ページ・目次のリンク切れが挙げられています。見出しの階層がそろっていないと目次が意図した形にならないこともあるとされています。
敬体と常体、どちらに揃えるべきですか。
本文では明確な正解は示されておらず、どちらに寄せるかを先に決めてから直さないと途中でやり直しになると述べられています。