コラム

本を出したい士業に足りないのは、中身ではなく変換の工程だ

セミナー資料や提案書、コラムはすでに1冊分の分量があっても、本の材料として見なされていないことが多くあります。足りないのは中身ではなく、本の形に変換する工程とその先の導線です。

親ガイド: 原稿の準備と取り込み方。Kindle本の材料にする手順

あなたのセミナー資料、すでに1冊分あります。

セミナーで話した内容。クライアントに配った提案書。事務所のサイトに載せたコラム。置き場所がばらばらなだけで、分量としてはもう1冊分ある。話す内容は毎回整理してあるし、質問されやすい論点も分かっている。同じ質問を何度も受けているなら、その答えはもう言葉になっている。資料はスライドやWordのまま、案件ごとのフォルダに散らばっている。

それでも本にならないのは、書き下ろす時間が取れないからだ。そしてそもそも、書き下ろさなければならないと考えているからでもある。実務で使ってきた資料は本にはならない、とどこかの時点で自分で決めてしまっている。本は書き下ろすものだ、という前提だけが残っている。手元の資料は準備段階のものだと見なして、原稿の候補から外している。

資料を原稿と見なさない理由は、たぶん完成度にある。スライドは話す前提で作ってあるので、それだけを読んでも通じない。ただ、通じないのは書き方の問題であって、中身が足りないわけではない。置き直せば通じるものを、置き直す前の状態で見て、使えないと判断している。

判断が止まるもうひとつの理由は、費用対効果が読めないことだ。商業出版は企画が通るかどうかが自分の手に負えない。通っても時間がかかる。かといって外部に頼めば、原稿を本の形に変換する工程がまるごと費用になる。各社が公表している相場では、文章がメインの書籍で最低100万円程度。企業出版になると安くても300万円という記述が出てくる。ただし、これらはいずれも出版サービスを売っている側が自社サイトに載せている数字だ。中立の調査ではないし、紙の書籍が前提になっている。

相場が読めないと、金額の妥当性も判断できない。事務所に前例がなければ、いくらかけるのが妥当かの基準もない。見積もりを何社か取っても、比べられるのは金額と納期だけで、成果の見込みは並んでいない。先に費用が確定して、成果があとから分かる。この順番だと、慎重な人ほど動けない。踏み切れないのは臆病だからではなく、判断材料の順序がそうなっているからだ。

納期の長さも判断を鈍らせる。数か月先に本が出るとして、その時期に何を仕掛けるかを先に決めておく必要がある。決めておいたことが、出るころに状況と合っているとはかぎらない。そのあいだ、事務所の集客に本は寄与しない。相談の場で渡せるものも、以前と同じままだ。

さらに、本が出たあとの導線が別作業になるという問題がある。本を作る依頼と、その本から問い合わせにつなぐ仕組みを作る依頼は、たいてい別の相手に出すことになる。1冊出したあとで、それをどう使うかをまた考え始める。そこでもう一度止まる。本ができた時点で力を使い切ってしまう。

コンサルティングの仕事では、別の事情も重なる。守秘義務があって事例をそのまま話せない、という指摘がある。何をしている人なのかが伝わりにくいのは、能力の問題ではない。説明できる材料が限られているからだ。だからこそ、個別の案件に触れずに考え方だけを見せられる形が要る。ところが、その形を作る工程で止まっている。

手元の資料は、形式もばらばらのまま置かれている。スライド、Word、PDF、印刷用に作った配布資料。案件ごとのフォルダに、年度をまたいで散っている。どれを使うかを選ぶには全部を開く必要があり、全部を開くには半日が要る。その半日を確保できないまま、資料だけが増えていく。

一度も全体を並べたことがない、という状態も続く。何ページあるのかを数えたことがない。だから1冊分あるのかどうかも、感覚でしか答えられない。足りないかもしれないと思っている状態では、着手の判断ができない。数えれば済む話が、数えないまま何年も置かれている。

止まっている場所を、意欲の話にしないほうがいい。材料はある。話す順番も決まっている。読者も特定できている。残っているのは、それを本の形に変換する工程と、その先の導線をどう用意するかだ。どちらも書く力とは別の種類の作業になっている。書き下ろすかどうかより先に、手元に何があるかを確かめる話になる。

今日できる確認もひとつ。過去1年分のセミナー資料をフォルダに集めて、ページ数を合計してみる。それだけで、書き下ろしが本当に必要かどうかが見えてくる。必要なのは追加の執筆ではなく、整理のほうかもしれない。1年分で足りなければ、2年分に広げて数え直せばいい。

出版ラクダではどうなるか

出版ラクダは、原稿を入れるだけで目次・本文整形・表紙・挿絵・販売文を生成し、EPUB/Kindle入稿用EPUB/PDFまで書き出す、買い切り型のKindle出版支援Webサービスです。出版ラクダの原稿取込はPDF・Word(.docx)・ZIP・各種テキストに対応し、合計50MBまで読み込めます。スライドや提案書、配布資料をそのまま入れられるので、本の形に変換する工程を、外部に依頼する前に自分で試せます。買い切り型で継続課金がないため、まず1冊分の分量を確かめる段階から使えます。

よくある質問

セミナー資料はそのまま原稿として使えますか。
スライドは話す前提で作られているため、それだけでは通じないことがあります。ただし中身が足りないわけではなく、置き直せば通じるとされています。
出版代行に頼むといくらかかりますか。
各社が公表している数字として、文章がメインの書籍で最低100万円程度、企業出版で安くても300万円という記述がありますが、各社が自社サイトに載せている数字であり中立の調査ではないとされています。