シリーズものは、絵のタッチがそろって初めてシリーズになる。
同じテーマで何冊か出していると、シリーズとして扱いたくなる。1冊読んだ人に次を手に取ってもらえるし、まとめて紹介もしやすい。番号を振って、タイトルの形式をそろえて、シリーズらしく見せようとする。冊数を出している人にとっては、いちばん効率のいい売り方でもある。
ところが並べてみると、シリーズに見えないことがある。タイトルの形式は同じなのに、表紙と挿絵の雰囲気が本ごとに違う。読者が最初に受け取るのは文字より絵の情報なので、そこがそろっていないと別々の本に見える。作っている側からすると、これは意外に気づきにくい。1冊ずつ作っているあいだは、その本に合うものを選んでいる。前の本と並べて確認する工程が、手順の中にない。
絵柄がずれる理由もいくつかある。道具を乗り換えた。指示文の書き方が変わった。時期によって好みが動いた。表紙を作るツールだけでも複数が紹介されているので、乗り換える機会はいくらでもある。画像生成の指示文は道具ごとに癖があるので、同じことを書いても出てくるものが違う。どれも本づくりの中では自然に起きることで、意識していないと毎回少しずつずれる。
挿絵になると、さらにばらつきやすい。表紙は1枚なので気にするが、挿絵は本文に合わせて何枚も入れる。1枚ずつ作っていると、本の中でもタッチがそろわなくなる。同じ本の中で絵柄が違うと、作りの雑さとして伝わる。表紙と挿絵が別の工程になっていると、そろえるという判断がどちらの工程にも属さない。だから抜け落ちる。
技術要件も、毎冊ついて回る。KDPのガイドラインでは、推奨寸法、解像度、ファイルサイズ、カラープロファイルがそれぞれ決まっている。シリーズでそろえるという話とは別に、1冊ごとに満たすべき条件がある。条件の確認に気を取られるほど、前の本と並べて見る余裕はなくなる。
そろえようとして規則を決めても、続きにくい。使う道具、指示文の型、色の系統。決めておいても、参照する手間があると忙しい回で飛ばされる。飛ばした回だけがずれて、あとから直すことになる。そして、その規則をどこに書いたかも、しばらくすると分からなくなる。
直すのも簡単ではない。すでに出した本の絵柄を作り直すには、その本の工程に戻る必要がある。次の本の作業が始まっていると、戻る理由が弱くなる。ずれたまま並び続ける。数冊まとめて作り直すとなると、それ自体が1冊分の作業になる。放置するか、大きく手を戻すかの二択になりやすい。
シリーズとして見せられないと、冊数を出している利点が薄れる。1冊ずつ独立した本が並んでいるだけの状態になり、次を読んでもらう流れが作れない。読者にとっても、同じ絵柄が並んでいれば続きものだと分かる。そこがそろっていないと、探す手がかりが1つ減る。
記録が残らないことも、そろわない理由になる。どの設定で作ったか。どの指示文を使ったか。どの色を選んだか。作っている最中は覚えているが、次の本に取りかかるころには思い出せない。実際にまとめた人の手順を読むと、原稿、下書き、最終原稿に加えて表紙画像を段階ごとに管理する話が出てくる。置き場所は分けていても、判断の理由までは残していないことが多い。
時間の配分も影響する。冊数を増やすほど、1冊あたりにかけられる時間は減る。表紙も挿絵も終盤の工程なので、締切が近いときにいちばん削られる。削られ方が本ごとに違うので、かけた時間にもばらつきが出る。
枚数の基準も、決まっていないことが多い。1冊に何枚入れるかを先に決めていないと、本ごとに密度が変わる。絵柄がそろっていても、枚数がばらつけば並びの印象は変わる。
確認の工程が手順に入っていないことが、根にある。作る手順は決まっているのに、前の本と並べて見る手順は誰も決めていない。やらなくても1冊は完成するので、抜けても気づかない。気づくのは、何冊か出したあとに著者ページを開いたときになる。そろっているかどうかは、作る側からは見えない。読者と同じ並びで一度見る必要がある。
今日できることもひとつ。シリーズにしたい本を並べて、絵柄が同じ系統に見えるかを確かめてみる。見えないなら、そろえる工程が抜けている。これから出す分だけでもそろえておけば、シリーズとして立ち上がる。過去の分を作り直すより、次の数冊で並びを作るほうが早い。
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