コラム

冊数が増えたときに先に壊れるのは、書く力ではなく管理だ

Kindle出版を量産する作家が、冊数を増やすと書く力より先に本の管理が破綻するという構造を説明する記事です。工程ごとに散らばる原稿・表紙・商品説明などの把握が天井になることを扱います。

親ガイド: Kindle出版の全手順。6工程とKDP公開までの流れ

冊数が増えると、書く手より管理が先に破綻する。

2冊目までは問題が起きない。フォルダを分けて、ファイル名に日付を入れておけば足りる。どの本のどの版かは覚えていられるし、探すのにも時間はかからない。この時期に作った管理の仕組みが、あとで足りなくなる。2冊のときにちょうどよかった方法は、10冊では回らない。ただ、途中で作り直す機会がないまま使い続けることになる。

5冊を超えたあたりから、様子が変わる。表紙の候補が入ったフォルダが本ごとにあり、変換前と変換後のファイルが混ざる。直したはずの版がどれか分からなくなる。ファイル名の付け方も、途中でルールを変えたせいで統一されていない。実際にまとめた人の手順を読むと、原記事、下書き、最終原稿と段階ごとにフォルダを分ける話が出てくる。そこに表紙画像、商品説明、EPUBが加わる。1冊でこの構成なら、10冊では単純に10倍の場所を覚えていることになる。

同時に複数を進めていると、さらに絡む。1冊目は表紙を作っている途中。2冊目は本文の整形中。3冊目は入稿待ち。それぞれ違う工程にあるので、どの本が今どこにあるかを頭の中で管理することになる。入稿待ちの本は、解説サイトによれば24〜72時間で結果が返る。その通知がいつ来るかも、自分で覚えておくことになる。

この管理は、書く作業の外側にある。原稿の質にも冊数にも直接は効かないのに、時間と注意を確実に食う。作業を再開するたびに、まず状態を確認するところから始まる。30分空いたときに、どの本のどの作業をするかを決めるだけで時間が過ぎることもある。

事故もここから起きる。古い版を入稿する。直した箇所が反映されていない。別の本の表紙を使ってしまう。どれも、状態を人の記憶で管理していることが原因になっている。差し戻されれば、直して再提出し、また通知を待つ。1回の取り違えで数日が消える。

道具が工程ごとに分かれていることが、これを悪化させる。本の状態が1か所にまとまっていないので、確認するには複数の場所を見る必要がある。冊数と工程の数を掛けた分だけ、確認する対象が増える。しかも、どこを見れば全体が分かるという場所がない。組み合わせて初めて状態が分かる。

冊数を増やすほど、この負担が大きくなる。書く速度は変わっていないのに、1冊あたりの所要時間が下がらない理由の多くが、ここにある。書けないのではなく、管理に取られている。ここで止まると、冊数の上限が管理能力で決まってしまう。もっと出せるはずなのに、把握しきれる範囲までしか出せない。書く力ではないところに天井ができる。

天井があること自体に気づきにくいのも問題だ。冊数が伸び悩む理由を、ネタ切れや時間不足に求めてしまう。実際には、把握しきれないから増やせない、という制約が効いている。管理に使った時間は記録に残らないので、あとから検証もできない。

手順が固まっていることも、見直しを遠ざける。2冊目までに作った方法で回してきたので、そこに時間がかかっていること自体を疑わなくなる。慣れているぶん、遅いという自覚も出ない。同じ作業を10回繰り返せば速くなるはずだが、管理の作業は冊数と一緒に増えるので、慣れても総量が減らない。

人に渡せないことも、天井の一因になる。道具が工程ごとに分かれていると、どこまで進んだかを共有するのに複数の場所の話をすることになる。前提を伝える手間が大きいので、結局は全部を自分で抱える。手伝ってもらう選択肢が使えないまま、抱えられる冊数が上限になる。

空いた時間が使えなくなるのも効く。状態の確認に15分かかる作りだと、30分空いた日には実質15分しか進まない。細切れの時間ほど、確認の割合が大きくなる。

だから、確かめるべきは書く速度ではない。いま何冊を並行して抱えていて、それぞれがどの工程にあるか。それを見ずに把握できるかどうかで、天井の位置が分かる。書く速度を上げる工夫は、たいていもうやっている。伸びしろが残っているのは、書いていない時間のほうだ。把握できる範囲が広がらないかぎり、書く速度をいくら上げても冊数は増えない。

今日できることもひとつ。いま進行中の本が何冊あるか、それぞれどの工程にあるかを紙に書き出してみる。すぐに書けないなら、管理はもう限界に近い。書けたとしても、それを毎回思い出すのに使っている時間があるはずだ。1冊あたり10分でも、冊数を掛ければ無視できない量になる。

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よくある質問

冊数を増やしたとき、先に限界が来るのは何ですか?
書く速度ではなく、本の管理です。原稿・表紙画像・商品説明・変換後のファイルなど、工程ごとに分かれた対象を把握する負担が、冊数と工程数を掛けた分だけ増えていきます。
管理の負担が限界に近いかどうかは、どう確認できますか?
いま進行中の本が何冊あり、それぞれどの工程にあるかを紙に書き出せるかを試す方法があります。すぐに書き出せない場合、管理はすでに限界に近い状態です。